17年ぶりのスカイ・クロラ

原点回帰。



11月29日の土曜日、

映画「スカイ・クロラ」のリバイバル上映を観てきました。

池袋にある新文芸坐で。実は初めて行きました。

レポっていうのとはまた違うかもだけど、
備忘録として、色々感じたことも含めて、ドッと書いておきます。超長文。



・・・・・

改めて劇場で、というエモ。


新文芸坐、入ったら館内ロビーとシアターの中で、ずっと映画のサントラが流れていて、
もう見る前からいきなり気持ちが出来上がってしまいました。笑
浴びてしまった感。
あ、この曲はあの場面の曲だな、あ、メインテーマだな、って。すぐに脳内がスカイ・クロラ一色に。


で、これも初めての経験だったんですが、
いきなり本編スタート。
映画館て大抵は10分くらい予告編が流れた後に本編じゃないですか。
今回はもう何もなし。(あ、もちろん配給のロゴのやつは流れたけど)

映画館って、当たり前だけど、音デカいじゃないですか。
暗い中で、デカいスクリーンで、デカい音でっていう、非日常的な空間に、
今までは予告編の猶予の間に順応してたんだなって気づきました。笑
今回はそれがゼロ。無防備むきだしの状態でダイレクトエントリー。

スカイ・クロラは特に、冒頭からガツンとくるタイプだから、
ティーチャのスカイリィの音が急に心臓をドンと直撃して、
ただでさえおっかない黒豹のマークが余計に威圧的に感じられて衝撃でした。


そうこうしているうちに、あっという間にドッグファイトが終わり、
魂が浮遊するオープニングへ。

ここで、やっと、「おわぁ、スカイ・クロラだぁ……」と認識が追いついてきて。(呆然)



なにせ、なにせ私は、森作品に「スカイ・クロラ」から入った民です。
ここから始まった、という作品。
感慨深いじゃありませんか。
なんか泣けてきてしまって。
でも、感情は上振れというよりは寧ろ凪ぎ、
集中と開放、ちょっとの郷愁みたいな感じで、
静かに、あまりに無抵抗に涙がポロンポロンこぼれて行きました。
いきなりのキャパオーバー。笑

出会いの追体験であり、しかもそれが、
Gシリーズひいては森ミスの完結の、直後のタイミングですよ。
あの日があって、今があるなぁ……という、17年を感じる瞬間でした。


出会ったあの日は



そもそも私、当時は「押井作品」として映画を観たので、森博嗣のモの字も知らん者でしたからね。

でも映画があまりにも刺さりすぎて、余韻が長い&深すぎて、
押井作品は基本的に好きってのを差っ引いても、
もはや支配的と言っていいほど心を奪われてしまい、
なんだこりゃ、どうしようってなっちゃって。
そこで、映画をお代わりするか、もしくは原作を読むかの二択で迷った末、
原作を読むことにしたのです。それが私の森世界の始まり。

ちなみに、映画しか観ていなかった時は、
なぜ、何が、そんなに刺さったのか、自分でも全く分かってませんでした。
これはただ事じゃないという嗅覚のみで、
引っかかったというか、当てたというか、そんな感じで。

でも、その謎の引力も、原作を読んで、納得。
「あ、こういう作品がある世界なら、生きていけるかも」
それが、一番の感想。そう思った瞬間のほっこりする感覚を、今もすごくはっきりと覚えてるんですよね。

クソみたいな世界にあっても、クリアに生きる。
無理に美化しなくていいし、飲めないくせに迎合して、苦い納得をしようとしなくていい。
クソはクソ。美しいものは美しい。
そこに他者からの認否は介在せず、自分の空があればいい。そんな感じ。

映画公開当時の私は、まぁちょっと調子を崩していまして。
遡ること数年前、様々なことが起きて、鬱を患い、コントロールを失ったまま自分が考えていた人生からみるみる逸脱していって。
「ああ、順路には二度と戻れない崖下に転げ落ちたんだ」って、
救助も期待しない遭難者が、ずぶ濡れの湿地帯で虚ろな散策をしてるような時期がありました。
その後、鬱が寛解してからは、普通に生活はできるけど、やはり不安定というか「根」がない浮草の空元気みたいな状態でした。

映画を観たのは、そんな呑気な遭難者もいたについて数年、やっと受け入れて前を向き始めたタイミングで、
周りからは「自分次第だよ」なんて言われたけど、果たしてそうかと、
自分の中はまだ整理はついていないけど、そう思わなきゃいけないのかって、ただ足だけは動かして進んでいるような時でした。


この映画を観たことでなんか、肩の力が抜けたというか、
自分の中に「素直」が生まれた感じがして。

「あ、やっぱ世界ってクソで合ってますよね? ですよね?」って、
どうも私の解釈が一方的に全面的に狂ってるわけじゃなさそうという予感、
「なんだ、そう思ってもいいんだ、そのまま生きててもいいのか」って、安心できたんですよね。

月並みな言い方だけど、「ひとりじゃない」って思えたんだろうな。
もう少し言うと「私もひとりでいいんだ」「まだ私が知らない、大丈夫で、ずっと孤独で、広がった世界がある」みたいな意味で。


本当に、あの時の安心の余力でここまで生きてきてる気がする。
スカイ・クロラに出会ってなければ、
フーコの言う「真っ直ぐ、ぶつかっちゃってる感じ」のまま、砕けてたかもしれない。
割と本気でそう思います。


などという、
そんな感じの、
初めて観た当時の想いとか、それを抱いていた自分への、今でこその愛着とか、
原作を何回も読んだ冬の指の冷たさとか、改めて噛み締めてしまって、
呼気みたいに自然に、涙として排出されていきました。
本当に、出会えてよかったね、助かったね、おめでとうの気持ち。


ここまで、まだオープニングです。笑

先に進めや。笑


音がやばかった。


メインテーマを劇場の大音響で聴けたのも良かったな。

この映画、音がまじですごくて、
リアルかつクリアな効果音が、劇場のスピーカをフルに使って展開されており、
それぞれの音の発生源がこれでもかと四方八方動き回るんですけど、
特にすごすぎてちょっと面白かったのが、
ドアの開閉の音。

映画のいくつかの場面で、画面の外、かつ観客の視点からすると背後の位置で、ドアが開閉される(誰かが部屋を出ていくとか)ってことがあったんですが、
なんとまさかの、
現実のシアターのドアの位置と、映画の音源の位置がドンピシャで。笑
効果音なのに、完全にシアターのドアが開閉されたと思っちゃって。笑
「誰かめっちゃ堂々たる出入りしたな……」
「……あ、違う、効果音だ」って遅れて気づくっていうのを、何回かやりました。
(これ、フォロワさんも言ってたので、割と同じ錯覚に陥った人いたんじゃないですかね)
それくらい、ほんっとに生っぽい、リアルな音だったんですよ。

他にも、床の木が軋む音とか、布が擦れる音、
基地でずっと聞こえる風鳴りの音も、
映画館で聴くとどれもすごく印象的で、映画表現として重要な要素を担っていたし、
響きが心地よくて素晴らしかったです。


あとキャラクターの声。
私的には三ツ矢の栗山千明様がやはり至高。
あの実直な跳ね返り感や、ゆらぎ、垣間見える弱さ、すべてが最高です。
原作は別として、あの映画の中では1番「近さ」を感じるというか、結末への橋渡しのような役割がありますよね。
映画の後半で彼女が登場したことで、茫洋とした世界から目が覚めていくような感覚が生まれて、
目が覚めてしまうからこそ、ひずみに当てられてしまうという、
その震える橋を、見事に演じられていると感じます。好きすぎる。


初めて観た時より感動したかもしれないシーン


カンナミが、気づくシーン、って言ったらいいんでしょうか。
あの、基地での日常を、思い出しているようで、ただ思い出しているのではない、
映画本編のシーンとは少しだけ違う映像が多数繰り返されるところ。

あれ、多分、初めて観た時は、
初見特有の「ストーリィの理解にある程度エネルギィを使う」状態で、
だから「そういうこと……」みたいな「真相を改めて開示されるシーン」みたいな扱いで捉えたと思うんですけど。
今回はなんか、もっと純粋に愛しい日常として感じたというか、
あの日々の中でも、笑顔があったり、何気ないやり取りがあったり、
そういう「なんてことない日々を生きている人々」的な印象を、
今までで一番強く感じて、
モノローグの「それだけじゃ、いけないのか」ともリンクして……

もうこれはね……非常に言語化が難しいし、野暮な気もするので、
これ以上は書けないや……
少なくとも、あそこで描かれた日常を、私は、少し哀しくも、温かく感じた、ということだけ、残しておきます。
胸がじんわりするような感覚になりました。


何度見ても、いい映画だなと思う。


原作のファンとして映画を観た人の中には、
人物や結末の改変について、よく思わない人もいるんだと思います。
それは仕方ないですよね。感情的には理解できます。
私は、スカイ・クロラに関しては、むしろ原作を知らずに観たことが幸いしたかも。
押井作品の中でもかなり好きな作品になりました。
好きなものが増えるのは、単純にハッピー。笑

ストレートに原作に入るのも、また良きだったかもしれないけど、
私は割と、こういう因果は楽しむタイプなので、
お気に入りです。


これ、前もどこかのSNSで書いたかもしれないけど、
当時は映画を友達と見に行って、その友達も、いい映画だったねとは言っていたけど、
それで終わってるんですよね。笑
一方の私は、人生変わってる。笑
同じ映画を観ても、人それぞれなんですよね、当たり前ですけど。
こういうの、面白いな〜〜と思います。


・・・・・

はい、そんなわけで、
私の人生を変えたスカイ・クロラを、
改めて劇場で浴びてきたお話でした。

まじで、観てなかったら全然違う人生送ってたと思うと、恐ろしくも不思議な感じがします。
これからも大切にしていきたい作品です。

観られてよかった!